デスクワークなどで座っている時間が長いと、肩凝りや腰痛に悩まされがちです。
近年は、座りすぎにより死亡率が上昇することが分かってきました。2011年に公表された世界20カ国における座位時間の実態をまとめた研究では、日本人の座位時間が最も長いと報告されています。ただし、日本人だけが突出しているわけではなく、世界中で『座りすぎ』が問題になっており、様々な健康被害を生み出しています。
たとえば、オーストラリアのベーカー心臓病・糖尿病研究所が、25 歳以上の男女 8,800人を対象に 6.6 年にわたり追跡調査した研究によると、テレビを 1 日 4 時間以上見ている人は、1日2時間未満の人よりも死亡率が1.46 倍も高いことが報告されました。座りすぎが総死亡率に及ぼす影響については世界中の国々から研究報告があり、それらをまとめた研究によると、座位時間が1日8時間以上になると死亡リスクが急激に上がることが指摘されています。
下肢には全身の約70%の筋肉があり、長時間動かさないでいると、糖の代謝や脂肪の分解が滞り、血流も悪くなります。このような座りっぱなしの生活を続けていると、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を引き起こし、ひいては心疾患や脳卒中、がんなどをまねきやすくなります。
健康を気にする人は、週末にジムに通ったり、ジョギングをしたりしますが、平日は座りっぱなしの人が多いということも知られています。座りすぎの健康リスクを少しでも減らすためには、普段からこまめに身体を動かすことが重要です。できるだけ頻繁に姿勢を変え、少しでも動くことが望ましいと言われています。できれば30分に1回、3分程度休憩を取り、強度は問わないので体を動かすようにしましょう。仕事中に立つのが難しければ、椅子に座ったままの足踏み、かかとの上げ下ろし、軽い屈伸などのエクササイズもお勧めです。
ご自身の環境づくりも大切です。スタンディングデスクで作業をするという選択もあります。立つだけでも筋肉を使い、無意識に足を動かします。普段使っている机に昇降デスクを置けば、立って仕事ができます。リモートワークが増えている今こそ、体を動かす習慣を身に付けてみませんか。
⑲座りすぎ対策に関する世界の動向
⑳私の座位行動時間、大丈夫?! セルフチェックと対処法
㉑座りすぎによるむくみ ~その原因と対策~
㉒座りすぎによるメンタルへの影響
【プロフィール】
◆岡 浩一朗(おか こういちろう)
早稲田大学スポーツ科学学術院、副学術院長兼スポーツ科学研究科長
1999年に早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程を修了、博士(人間科学)の学位を取得。早稲田大学人間科学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)介護予防緊急対策室主任を経て、2006年4月、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授に着任。2012年4月より現職。専門は、健康行動科学、行動疫学。岡浩一朗オフィシャルWebサイト。ワセダオンライン「『座り過ぎ』が健康寿命を縮める」。
◆荒木 邦子(あらき くにこ)
早稲田大学スポーツ科学学術院非常勤講師
早稲田大学アクティヴ・エイジング研究所研究員
博士 (スポーツ科学) (早稲田大学)
健康づくり・介護予防事業立上げ・指導を経て2009年より現職。
ヘルスプロモーション、運動指導方法論、介護予防プログラム開発指導をはじめ
自治体・企業の健康づくり事業、地域活性事業に携わる。
日経プラスワン「カラダづくり」連載、NHKBS「チョイス」、TBS「あさちゃん」他出演。