⑥新型コロナウィルス感染症予防対策による外出自粛を振り返る

新型コロナウィルス感染症予防対策による外出自粛の際、家の中でじっとしていた方も多いのではないでしょうか?自粛=安静は間違いです。運動不足の毎日が続き、「このままでは危ない!」と危機感を覚えた人も少なくないのでは?WHO(世界保健機関)の発表によると、世界の死因の6%は運動不足、実際は死因トップ4に位置しています。

さらに、運動不足は乳がんおよび結腸がんの主要因の25%、糖尿病の27%、心疾患の30%を占めています。厚生労働省の調査では、身体活動量が多い人や、運動をよく行っている人は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いこと、また、身体活動や運動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められています。

また、生活習慣病の予防などの効果は、身体活動量(「身体活動の強さ」×「行った時間」の合計)の増加に従って上昇すると言われています。長期的には10分程度の歩行を1日に数回行う程度でも健康上の効果が期待できます。


もう一つ、重要なことがあります。「Sitting is Killing You」直訳すれば「座ることがあなたを殺す!」です。「大げさな」「まさか」と思われた方もいるでしょう。しかし、ニューヨークタイムズやワシントンポストなど世界中で読まれているメディアでも取り上げられ、現代人特有の命を縮める要因として、今、世界的な関心が高まっている健康問題が「座りすぎ」です。

「座りすぎ」は「タバコやアルコールよりも健康に悪い」と指摘する専門家もいるくらいです。米コロンビア大学医学部の研究チームによる研究では、「座って過ごす時間が長すぎると、年齢や性別や運動習慣のあるなしにかかわらず、死亡リスクが格段に高まる」という衝撃情報が発信されています。

何か特別なことをしたから「座りすぎ」になるわけではありません。デスクワーク、会議、テレビ、スマホ、食事、電車や車での移動、運転、授業や講義の受講……そんなごくごく日常の座っている時間の中に、重たい病を呼び込む要因や、死因が潜んでいるから怖いのです。

まだまだ続くと思われる新型コロナウィルス感染症予防対策。テレワークや余暇の過ごし方には注意が必要です。歩くことを意識する、簡単な運動を生活に取り入れる、デスクワーク時に定期的に立ち上がる、またはデスクワーク自体を立って行う環境にするなど、ご自身にできることから積極的に取り組んでみてください。

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⑨何気ないその行動が未来を縮める?!

【プロフィール】

◆岡 浩一朗(おか こういちろう)

早稲田大学スポーツ科学学術院、副学術院長兼スポーツ科学研究科長

1999年に早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程を修了、博士(人間科学)の学位を取得。早稲田大学人間科学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)介護予防緊急対策室主任を経て、2006年4月、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授に着任。2012年4月より現職。専門は、健康行動科学、行動疫学。岡浩一朗オフィシャルWebサイト。ワセダオンライン「『座り過ぎ』が健康寿命を縮める」。

◆荒木 邦子(あらき くにこ)

早稲田大学スポーツ科学学術院非常勤講師
早稲田大学アクティヴ・エイジング研究所研究員
博士 (スポーツ科学) (早稲田大学)

健康づくり・介護予防事業立上げ・指導を経て2009年より現職。
ヘルスプロモーション、運動指導方法論、介護予防プログラム開発指導をはじめ
自治体・企業の健康づくり事業、地域活性事業に携わる。
日経プラスワン「カラダづくり」連載、NHKBS「チョイス」、TBS「あさちゃん」他出演。