②座りすぎが健康に悪影響を及ぼすメカニズム

立ったり歩いたりしているとき、筋肉の細胞内では血液中から糖や中性脂肪が取り込まれエネルギーとして消費される「代謝」が盛んに行われます。ところが長く座り続けると全身の代謝機能を支えてきた脚の筋肉が活動せず、リボタンパクリパーゼの分泌が低下します。つづいて高血糖症、高インスリン血症、脂質異常症といった具合に、代謝機能や血液の流れが悪くなります。また、座って脚の筋肉がほとんど動かないと、「第二の心臓」と言われるふくらはぎの活動は停止状態に陥り、下半身に下りた血液を心臓に押し戻すポンプの働きが停止して、全身に酸素や栄養を送る血流が滞ってしまいます。その結果、肥満や糖尿病などの代謝疾患や心疾患のリスクが高まるなど、健康を大きく損なうことが分かっています。座りすぎでカラダが悲鳴を上げているかもしれません。幸福な未来のためにも、生活スタイルを見直しましょう。

 

①座りすぎにはどのような健康リスクがあるのか?

③知らず知らずに座り続けている働き盛り世代

④日頃の生活の中でできる座りすぎ防止対策

⑤~座りすぎ防止対策に効果はあるのか?~

【プロフィール】

◆岡 浩一朗(おか こういちろう)

早稲田大学スポーツ科学学術院、副学術院長兼スポーツ科学研究科長

1999年に早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程を修了、博士(人間科学)の学位を取得。早稲田大学人間科学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)介護予防緊急対策室主任を経て、2006年4月、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授に着任。2012年4月より現職。専門は、健康行動科学、行動疫学。岡浩一朗オフィシャルWebサイト。ワセダオンライン「『座り過ぎ』が健康寿命を縮める」。