⑪腰痛予防のための正しい座り方やウォーキングをより効果的に楽しむための正しい歩き方とは?

もともと腰痛持ちだから、この一年半のテレワークで腰痛を感じるようになった、理由はわからないが腰が重だるい、コロナ禍でウォーキングを始めたが腰が痛くなったなど、様々な理由で腰痛を自覚している方が多いのではないでしょうか。

厚生労働省が公表する「国民生活基礎調査の概況」において、腰痛が国民の代表的な愁訴(有訴者率:男性 1位、女性では肩こりに次いで 2 位)であることはよく知られています。「どう予防すれば?」とお悩みの方も多いでしょう。

一般的な歩き方は「腕を振って、踵から着地する歩き方」で、これは「エクササイズウォーク」とも呼ばれています。胸を張り、腕を振って颯爽と歩く姿は格好よく見えるでしょう。しかし、この歩き方は重心の上下動が大きく、踏み出した足の踵が着地するときに腰椎に衝撃が伝わりやすくなります。

一方で、和服を着た時や能など、日本の伝統文化の「すり足」をイメージしてください。和の動作で前に進むときは、踏み出した足の裏全体で着地して足を運びます。この歩き方は上下動が少なく腰椎にかかる負担も小さくすみます。

健康の維持・増進やエネルギー消費量を増やす観点から「エクササイズウォーク」が推奨されていますが、身体に負担のかからない歩き方が好ましい場面もあります。歩行は何気ない日常の動作ですが、目的や場面に応じて歩き方を変えてみることをお勧めします。

そして、「正しい座り方」。腰痛予防として、椅子の高さは膝が90度程度、脊柱が自然なS字ラインを保つよう上体を起こし、作業机は肘が90度程度になるよう調節するなどの方法が推奨されています。

一方で、いくら正しい座り方をしていたとしても、座り続ければ、血行不良、腰部周辺筋群のこわばりをまねき、腰痛へと進行しかねません。多少、姿勢の乱れはあったとしても、「30分に1回立ち上がって軽く動く」など、『座りすぎを予防することこそ腰痛予防の第一歩』ではないでしょうか。

⑩「長引くコロナ対策、メンタルは良好ですか?」

⑫リモートワーク・オフィス勤務中の「座りすぎ」対策『こっそりできる運動サプリ』

⑬今問われる健康「2020,WHO身体活動・座位行動指針」から

【プロフィール】

◆岡 浩一朗(おか こういちろう)

早稲田大学スポーツ科学学術院、副学術院長兼スポーツ科学研究科長

1999年に早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程を修了、博士(人間科学)の学位を取得。早稲田大学人間科学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)介護予防緊急対策室主任を経て、2006年4月、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授に着任。2012年4月より現職。専門は、健康行動科学、行動疫学。岡浩一朗オフィシャルWebサイト。ワセダオンライン「『座り過ぎ』が健康寿命を縮める」。

◆荒木 邦子(あらき くにこ)

早稲田大学スポーツ科学学術院非常勤講師
早稲田大学アクティヴ・エイジング研究所研究員
博士 (スポーツ科学) (早稲田大学)

健康づくり・介護予防事業立上げ・指導を経て2009年より現職。
ヘルスプロモーション、運動指導方法論、介護予防プログラム開発指導をはじめ
自治体・企業の健康づくり事業、地域活性事業に携わる。
日経プラスワン「カラダづくり」連載、NHKBS「チョイス」、TBS「あさちゃん」他出演。